集合住宅におけるペットの法的扱い
ペットに関するご近所トラブルは、集合住宅が乱立されるようになった高度成長期の頃からずっと存在し続けてきた根の深い問題です。
ペットは飼っている人にしてみると大切な家族の一員ですが、集合住宅という狭い空間に暮らす別の住民からしてみるとニオイや毛、糞など多くの問題をもたらす原因になります。
法律的にはペットは飼い主の占有物として扱われるので「動物占有者」という立場におかれる飼い主は、ペットが原因で起こる事象についての責任を全面的に追うことになります。
占有物の規定は民法第718条によりますが、その他にも別に自治体が独自に条例を設けていることがよくあり地域ごとのルールに従った飼育方法をしていかないといけないことになっています。
さらに実際に住んでいる集合住宅ごとにペット飼育のルールが定められており、入居時にそれらに同意をしなくてはいけないこともほとんどです。
ペットに関するトラブルを極力避けるためにも、まず自分の居住地や居住場所におけるペット飼育のルールをしっかりと確認してルール違反をしないようにすることを心がけないといけません。
ペットに関するトラブルが起こると、当事者同士だけでなくマンションの管理組合や賃貸住宅の大家さんを巻き込んだ闘争に発展することになったり、場合によっては裁判沙汰にまでなるケースもあるの十分に気をつけて飼育しましょう。
実際に多く見られるペットトラブル
ペットに関するトラブルのうち、もっとも多く聞かれるのがニオイに関する事例です。
集合住宅でペットを飼育されている人の場合、ペット用トイレをベランダに設置するケースが多くそれがベランダ越しに他の住民に迷惑をかけるというようなことがあるのです。
ひどい場合になると外干しをしていた洗濯物に糞尿のニオイがついてしまったり、常に室内にニオイが充満するようになったりということもあります。
また犬の場合には毎日散歩のために外に連れ出すためエレベーターを利用し、中に糞をさせっぱなしにするような飼い主もいたりします。
他にも発情期に夜鳴きをしたり、室内を駆けまわったりしたときに発する騒音などもトラブル事例として非常によく聞かれます。
集合住宅の場合、そうした迷惑行為は管理組合などがまとめて警告を出すようになっており、それらの行為をただちに停止しかつ再発しないための予防措置を取るように請求がされます。
場合によってはペット飼育の停止や処分が要望されることもあります。
過去の裁判では一律飼育停止もあります
ご近所トラブルはどのようなケースでもこじれ始めるとどこまでもこじれていってしまう特徴があります。
ペットに関するトラブルも裁判所を介しての徹底抗戦になってしまった事例がいくつかあり、その都度厳しい決定が飼い主に課せられてきました。
実際の事例の一つを紹介すると、東京高裁で平成6年8月4日に出された判例として、裁判所が争いのあったマンションで一律にペット飼育を禁止したということがあります。
この裁判はマンションの管理組合が「ペット飼育禁止」というふうに規約を改正したことを有効とするかという住民同士の争いだったのですが、裁判所は動物飼育を一律に禁止する改正は有効であり共同の利益を守るために必要な措置であるという判断をしました。
現在においてはそれまで自由に飼育を認めてきたマンションが突然に規約を改正するということはなく、事前にペット飼育の規定が決まっていることがほとんどです。
違反者が見つかった場合にはかなり厳しい罰則を与えられることになりますので、仮に許可のあるマンションに入居する場合であってもペットを飼育する際にはトイレの設置や室内の清掃、去勢・避妊の手術などかなり丁寧に世話をしていくようにしましょう。