マンション内での店舗営業

増える自宅開業に関するトラブル

一般にマンションとして販売されている物件は、最初から「居住用」「店舗用」として区別して販売されています。

購入をする人は基本的にそうした用途に従い、専用に使用をしていかないといけないこととなっています。

店舗用の商業物件の中で寝泊まりをすることは問題がありますが、より問題が深刻化してしまうのが居住用のマンションの敷地を店舗として使用をしてしまう場合です。

近年では少人数でも簡単に会社を作ることができるように法律が改正されたことや、個人でもネットなどを通じて簡単に集客ができることから、副業として自宅を使用して商売をするという人が増えてきています。

自室を使った商売の場合、オフィスとして利用をしたり店舗として利用をしたりすると、どうしても訪問する人の出入りが頻繁になってくるので同じ建物に暮らす人から苦情を受けることもあります。

そもそもマンションの規約違反に抵触する行為にあたることもあるので、そうした違反がわかり周囲に与える影響が甚大である場合には毅然とした対応で是正を求めていかなくてはいけません。

逆に自宅を使用してなんらかの商売をしたいという場合には、勝手な判断で動くのではなくどの程度の範囲までなら許可されるかということを確認して開始をするようにしましょう。

実際の裁判事例と判例

マンション内居室の店舗利用については以前より多くの裁判事例が報告されています。

実際に裁判により判決が出た事例としては、横浜地方裁判所の平成6年9月9日のものがあります。

この訴訟においては、近くにある病院の保育室としてマンションの一室を利用したという場合において、契約外の使用方法としてマンション管理側が一方的に使用を禁止することができるかということが争われました。

マンションの一室を保育室として利用するということは持ち主である病院側にとっては大き利益を生み出す行為である一方で、マンション内に居住する住民にとっては多くの人の出入りや子供の出す騒音により多大な不利益をこうむるものになります。

またその病院やマンションの所在する地域には他にもいくつかの物件が存在しており、必ずしも閑静な住宅街にある当該マンションの一室を使用しなくてはいけないというものではありませんでした。

そうした状況をかんがみ、裁判所は病院側が保育室として使用することを禁止しマンション管理者側の要求を認めています。

用途外の利用は絶対に禁止されるわけではない

しかしながらマンション内をオフィスや店舗として利用するということが、全国どこでも必ず禁止になるというわけではありません。

上記のような事例は他にも何件か裁判事例として見られていますが、中にはその営業内容や周辺の環境などにより一律に禁止するのではなく一定の是正でよいとした事例が見られています。

マンションの使用目的が居住用と店舗用に分けられている理由は、店舗などとして使用することにより見知らぬ人の出入りが増え治安面に不安が生じるようになってしまったり、階段や通路、エレベーターなどの共有部分にゴミや騒音が起こる可能性が増えるためです。

逆に言えばそうした他の区分所有者に著しい迷惑をかけるわけではないという場合であれば、かりに居住用のマンションであっても店舗などとして使用することが認められるということになります。

しかしながらいくら周辺に迷惑がかけにくい業種とはいえ、何の連絡もなく勝手に使用方法を変更するということは近所の人は管理者に悪い印象を与えてしまいます。

そのため、もし今後店舗などとして使用をしたい場合には事前にマンション規約をしっかり確認するとともに、管理人にどういった目的で使用するかを説明して許可をとっておくようにしましょう。